1995年1月17日、マグニチュード7.3の地震が兵庫県南部で起こりました。この地震の震源が近かったため、多くの人が亡くなったり行方不明になったりして、全壊した家屋が約10万戸、全焼した家屋が7万戸もありました。この地震は「阪神淡路大震災」と呼ばれています。
今では首都圏でも同じように、震源が直下にあるマグニチュード7クラスの地震が起こるのではないかと心配されています。日本は地震がとても多い国で、世界中で起きるマグニチュード6以上の地震の約2割が日本周辺で発生していると言われています。地震が多い場所は、地球の表面にあるプレートがぶつかり合う場所と重なっています。プレートはとても大きな岩盤で、少しずつ動いています。この動きでプレート同士がぶつかると強い力がかかり、それが地震を引き起こすのです。
日本の周りには2つの海側のプレートと2つの陸側のプレートがあります。これらのプレートは毎年数センチずつ動いています。特に首都圏はフィリピン海プレートが北米プレートの下に、さらにその下に太平洋プレートが沈み込むという複雑な構造をしていて、地震が多く発生します。首都圏では活断層が原因で起きる地震や、プレートの沈み込みで起きる地震など、さまざまな地震が発生する可能性があります。
関東地方の地震の歴史を見てみると、元禄関東地震や大正関東地震のようなマグニチュード8クラスの大きな地震や、マグニチュード7クラスの直下型地震が多く発生しています。特に直下型地震はいつどこで起きるかわからないため、いつ発生してもおかしくないと言われています。
日本全国どこでも内陸直下型の地震が発生する可能性があり、過去30年間で多くの被害を伴う地震が起きています。例えば1995年の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)、2004年の新潟県中越地震、2016年の熊本地震などがあります。これらの地震は最大震度7を記録しました。
首都圏でマグニチュード7クラスの地震が起こる確率は、今後30年以内に70%と言われています。この地震が起きると、私たちは何を経験することになるのでしょうか?首都直下地震対策検討ワーキンググループの報告を基にシミュレーションしてみましょう。
一つの特徴は、都心部を囲むように存在する木造住宅密集地帯などです。古い木造家屋やビルが多く、揺れによって多くの倒壊や損壊が発生する可能性があります。兵庫県南部地震や熊本地震でも、木造家屋の倒壊が多く見られました。激しい揺れは十数秒ほど続きますが、その間に木造家屋が倒れる強い破壊力があります。
もう一つの特徴は、都心部周辺に広がる木造住宅密集地域での火災の多発と炎症です。木造住宅密集地域では道路が狭く、消防車両の進入が難しいため、火災が広がりやすいです。そのため、日頃から消火器を使う訓練に参加して、自分たちの家や地域を火災から守ることが大切です。
また、東京には他県からの通勤・通学者が多く、帰宅困難者が発生することが予想されます。駅やスペースには限りがあるため、一時的に宿泊しなければならない人も出てくるでしょう。また、帰宅困難だけでなく、自宅から職場に戻れない問題も発生します。混乱や危険を避けるために、むやみに移動するのではなく、その場で待機することも重要です。企業は従業員を一斉帰宅させるのではなく、待機させることが求められます。そのために必要な備蓄や一時滞在施設の確保、家族との安否確認手段の確保などの取り組みを進めておく必要があります。
首都直下地震の被害想定と対策についての最終報告では、最大で2万3000人が亡くなるとされています。これは阪神淡路大震災の約3.5倍です。また、全壊および半壊の家屋の数は最大で約61万戸とされ、阪神淡路大震災の約5.5倍です。上水道も約5割の利用者が断水し、トイレの使用ができなくなります。地域によっては復旧に数週間かかることもあります。
道路では特に環状8号線の内側を中心に深刻な交通渋滞が発生し、消火活動や救命救助活動、ライフラインの応急復旧などに大きな支障が出る可能性があります。帰宅困難者は最大で約800万人、そのうち東京都内だけでも最大で約490万人になると予想されています。避難者は断水や停電の影響で発災後2週間後に最大で約720万人に達すると見込まれています。
このような状況下での避難所生活はとても過酷です。体育館や公民館などの硬い床で寝起きし、水や食糧が不足することで空腹に耐えなければならないこともあります。断水により十分な洗髪や洗顔ができない不衛生な状態が続きます。特にトイレが使えないことで非常に不衛生な状態になります。避難所ではプライバシーも確保しにくく、心身ともに非常に厳しい生活が続くことになります。
首都直下地震での経済的被害は約95兆円とされ、日本の国家予算に匹敵します。これは南海トラフ巨大地震以上の経済的損失です。しかし、適切な対策をとれば被害を大きく減らすことができます。例えば、揺れによる建物の全壊数は耐震化率を現状の79%から90%に上げることで約6割まで減らすことができます。耐震化率を100%にすれば約2割まで減らすことができます。
また、建物全壊・半壊を免れたとしても、家具や家電が転倒・落下して怪我をしたり命を落としたりすることがあります。住宅内の安全確保のために、家具などを専用の器具や道具を使って固定しておくことが大切です。地震火災については、感震ブレーカーや家庭用消火器の設置、防災訓練の実施など、出火防止対策を強化することで被害を劇的に減らすことができます。
首都直下地震が発生した直後は、深刻な交通渋滞などにより外部からの物資補給が難しく、水や食糧が不足することが想定されます。そのため、家庭では最低3日分、できれば7日分の飲料水や食糧を備蓄しておくことが必要です。保存のきく食糧や飲料水を多めに買い込んでおくなど、日常的に対策することが重要です。また、水洗トイレが使えなくなることを想定して、災害用簡易トイレを備えておくことも重要です。
都会では特に備蓄が重要です。高層マンションではエレベーターが長期間止まることを考えると、通常の備蓄では不十分です。企業や学校などでは従業員や生徒が一時的に滞在できるように、水や食糧や災害用トイレなどの必要資材を備蓄しておくことが求められます。
これまでにマグニチュード7クラスの地震が首都直下で何度も発生してきました。将来的には、さらに規模の大きな関東大震災クラスの地震が起こる可能性もあります。大地震はいつ発生してもおかしくありません。私たちは、災害のリスクを正しく認識し、地震が起こる前に今こそ個人として、そして社会として減災への取り組みを真剣に考え、実行するべき時期に来ています。
例えば、家庭では次のような準備をしておきましょう。まず、保存のきく食糧や飲料水を多めに買い置きしておきます。これは、カップ麺や缶詰、インスタント味噌汁など、普段食べているもので大丈夫です。これらを少し多めに買って、賞味期限の古いものから消費し、食べたらその分を補充するという「ローリングストック法」を実践します。こうすれば、いつも新鮮な備蓄食品が手元にあり、無駄なく使えます。
また、災害用簡易トイレを準備することも重要です。水洗トイレが使えなくなった時に備えて、簡易トイレを家族の人数分、しっかりと用意しておきましょう。さらに、家庭用消火器や感震ブレーカーの設置も忘れずに。これらは火災の発生を防ぐために非常に重要です。
地域の防災訓練に参加して、消火器の使い方を練習したり、避難経路を確認したりすることも大切です。いざという時に備えて、家族全員が迅速に行動できるようにしておきましょう。
企業や学校でも、従業員や生徒が一時的に滞在できるように水や食糧、災害用トイレなどを備蓄し、非常時の対応マニュアルを作成しておくことが重要です。また、従業員や生徒が家族と連絡を取れる手段を確保しておくことも必要です。
繰り返し発生している首都直下地震や、将来的に発生する可能性のある大地震に対して、私たちは日頃から備えておくことが重要です。日常生活の中でできることから始めて、少しずつでも防災対策を進めていきましょう。家族や地域の安全を守るために、今こそ行動を起こす時です。